【リハスタッフ向け】甲状腺機能低下症に対するリハビリと注意点

りはスタ運営局
本サイトではアフィリエイト広告を利用しています

甲状腺機能低下症ってどんな病気?甲状腺機能低下症に対するリハビリで気をつけることはある?

そんな疑問をお持ちの方に向けた記事です。

この記事を読めば、

  • 甲状腺機能低下症の「原因」「症状」「治療」について
  • 甲状腺機能低下症に対するリハビリと注意点について

が分かります。

※この記事は医療従事者向け(特にリハビリスタッフ向け)に書いた記事ですので、ご了承ください。

甲状腺機能低下症の原因

甲状腺機能低下症の原因は、甲状腺ホルモンの分泌が正常に行われないことにあります。

主な原因は以下の通りです。

  1. 橋本病(慢性甲状腺炎):自己免疫疾患で、免疫系が甲状腺を攻撃してしまうことが原因です。特に中年女性に多く見られます。
  2. 亜急性甲状腺炎:ウイルス感染による一時的な甲状腺炎です。
  3. 無痛性甲状腺炎:分娩後の自己免疫異常によるものです。
  4. 先天性甲状腺機能低下症:生まれつき甲状腺に異常がある場合です。
  5. 異所性甲状腺腫:甲状腺が通常の位置にない場合です。
  6. 中枢性甲状腺機能低下症:下垂体や視床下部の異常によるものです。

これらの原因により、甲状腺ホルモンの分泌が低下し、身体の新陳代謝が低下することで、疲労感、むくみ、脱毛などの症状が現れます。

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたりますが、主なものは以下の通りです。

  1. 疲労感:常に疲れを感じることが多いです。
  2. 体重増加:食事量が変わらなくても体重が増えることがあります。
  3. 寒がり:寒さに対する耐性が低くなります。
  4. 便秘:消化機能が低下し、便秘がちになります。
  5. 乾燥肌:肌が乾燥しやすくなります。
  6. 脱毛:髪の毛が抜けやすくなります。
  7. むくみ:特に顔や手足がむくむことがあります。
  8. 抑うつ:気分が落ち込みやすくなることがあります。
  9. 記憶力低下:集中力や記憶力が低下することがあります。

これらの症状は個人差があり、すべての症状が現れるわけではありません。

甲状腺機能低下症と心不全の関係

甲状腺機能低下症と心不全には密接な関係があります。

甲状腺ホルモンは心臓の機能に重要な役割を果たしており、ホルモンの不足は心臓にさまざまな影響を与えます。

  1. 心拍数の低下:甲状腺ホルモンが不足すると、心拍数が減少し、心臓が適切に血液を送り出すことができなくなります。
  2. 高血圧:甲状腺機能低下症は血圧の上昇を招くことがあります。特に収縮期血圧が高くなることが多く、心臓や血管に負担をかけます。
  3. コレステロールの増加:甲状腺ホルモンが不足すると、コレステロールの代謝が低下し、血中のLDL(悪玉コレステロール)やトリグリセリドが増加します。これにより、動脈硬化のリスクが高まり、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクが上昇します。
  4. 心筋の収縮力の低下:甲状腺ホルモンは心筋細胞の代謝を促進し、収縮力を高める働きがあります。ホルモンが不足すると、心臓のポンプ機能が低下し、心不全のリスクが増加します。

甲状腺機能低下症の診断と治療が適切に行われることで、これらのリスクを軽減することができます。

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症の治療は、主に不足している甲状腺ホルモンを補充することに焦点を当てています。

以下に、一般的な治療方法を紹介します。

  1. 甲状腺ホルモン補充療法:チラーヂンSやレボチロキシンNaなどの甲状腺ホルモン薬を服用します。これにより、体内の甲状腺ホルモンの不足を補います。
  2. 生活習慣の改善:バランスの取れた食事や適度な運動を心がけることが重要です。特に、ヨウ素の過剰摂取を避けることが推奨されます。

甲状腺機能低下症による採血データの変化

甲状腺機能低下症になると、採血データに以下のような変化が見られます。

  1. 甲状腺刺激ホルモン(TSH):TSHの値が上昇します。これは、甲状腺ホルモンの分泌が不足しているため、脳下垂体が甲状腺を刺激しようとするためです。
  2. フリーT4(FT4):FT4の値が低下します。FT4は甲状腺ホルモンの一種で、甲状腺機能低下症ではその分泌が減少します。
  3. フリーT3(FT3):FT3の値も低下します。FT3はFT4から変換されるホルモンで、代謝を活性化する役割があります。
  4. コレステロール:総コレステロールやLDL(悪玉コレステロール)の値が上昇することがあります。甲状腺ホルモンが不足すると、コレステロールの代謝が低下するためです。
  5. クレアチンキナーゼ(CK):CKの値が上昇することがあります。これは、甲状腺ホルモンの不足により筋肉の代謝が低下し、筋力低下が起こるためです。

これらの数値の変化は、甲状腺機能低下症の診断や治療効果の判定に重要な役割を果たします。

甲状腺機能低下症に対するリハビリと注意点

甲状腺機能低下症の患者さんに対するリハビリは、症状の改善と生活の質の向上を目指して行われます。

  1. 筋力トレーニング:筋力低下を防ぐために、軽い負荷から始めて徐々に強度を上げる筋力トレーニングを行います。特に、骨量減少の回復に役立ちます。
  2. 有酸素運動:ウォーキングや水泳、太極拳などの負荷の少ない有酸素運動は、関節痛の緩和や心肺機能の向上に効果的です。
  3. ストレッチ:柔軟性を保つために、定期的なストレッチを行います。これにより、筋肉や関節の硬直を防ぎます。
  4. バランス訓練:転倒予防のために、バランス訓練を取り入れます。特に高齢者にとって重要です。

注意点

  1. 運動の強度:甲状腺機能低下症の患者さんは疲れやすいため、運動の強度を低く設定し、徐々に増やすことが重要です。
  2. 定期的なモニタリング:リハビリを行う際には、定期的に甲状腺ホルモンのレベルをモニタリングし、医師と相談しながら進めることが大切です。
  3. 栄養管理:バランスの取れた食事を心がけ、特にヨウ素の過剰摂取を避けるようにします。

これらのリハビリ方法と注意点を守ることで、甲状腺機能低下症の症状を改善し、生活の質を向上させることができます。

甲状腺機能低下症のまとめ

  • 甲状腺機能低下症の原因には「橋本病(慢性甲状腺炎)」「亜急性甲状腺炎」「無痛性甲状腺炎」「先天性甲状腺機能低下症」「異所性甲状腺腫」「中枢性甲状腺機能低下症」がある
  • 甲状腺機能低下症のリハビリでは「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」「フリーT4(FT4)」「フリーT3(FT3)」「コレステロール」「クレアチンキナーゼ(CK)」の数値に注意する
ABOUT ME
りはスタ運営者:ぱぱひさ
りはスタ運営者:ぱぱひさ
りはスタ運営者の「ぱぱひさ」と申します。総合病院に勤務する現役の理学療法士です。心臓リハビリテーション指導士・呼吸療法認定士を保有しています。がんリハ研修受講済・臨床実習指導者講習会受講済。OSCE(オスキー:客観的評価能力試験)試験官経験あり。心臓リハ・呼吸リハ・ICUリハの分野で働くリハスタッフのためのサイトとなるよう目指して記事を書いていきます。
記事URLをコピーしました