心不全に対するリハビリの注意点【評価項目10選】

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この記事は、医療従事者向けの記事になっています。

心不全のリハビリって何をしたらいいの?
心不全の人へのリハビリの負荷ってどこまでいいの?

そんな疑問をお持ちの方に向けた記事です。

答えは1つではないので難しいですが、1つだけハッキリ言える事があります。

それは「心不全は、病名じゃなくて病態である」という事。

心不全は「病名」ではなく「病態(状態)」を指す言葉です。

なので、心不全を起こしている「もとの原因(病名)が何なのか」が大事です。

心不全を引き起こしている原因(病名)が分からないと、リハビリでどこまで負荷をかけて良いのかは分かりません。

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心不全リハビリの注意点【重要なのは原因疾患】

心不全とは、病気の名前(病名)ではありません。

つまり「心不全だから、運動の負荷をどうのこうの・・・」は言えません。

心不全とは「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義される

心不全だとしても「負荷をしっかりかけて良い心不全」と「負荷をかけるべきではない心不全」とがあります。

理由として、心不全を引き起こしている「原因(病名)」が違うからです。

【関連記事】心不全とはどんな病気?【分かりやすく噛み砕いて解説します】|りはスタ 

回復期・生活期のリハビリスタッフの方へ

紹介状(サマリー)に「心不全」とあったら、何が「原因疾患なのか」を確認しましょう。

心不全を引き起こしている原因が、「不整脈」なのか「弁膜症」なのか「過去の心筋梗塞」なのか。

原因がなになのかによって、リハビリの負荷量は変わります。

仮に「大動脈弁狭窄症」による心不全なら「負荷はかけない方がいい」です。

逆に「カテーテルなどでの治療済みの心筋梗塞」が原因の心不全なら、borgスケールを目安に、負荷を上げていっても大丈夫でしょう。

なんども言いますが「心不全」は「病名ではなく病態を表しているだけ」です。

回復期や生活期の方は、紹介状(サマリー)などに「心不全」という言葉だけが載っていたら、心不全を引き起こしている原因(根本の病気)を紹介元に確認してあげてください。

サマリーに詳しい情報が記載されておらず、紹介元からの返答待ちの間は、まずは「息切れ・呼吸苦・心拍数」を目安にすると良いです。

関連記事:心不全のリハビリの中止基準3選【息切れ・呼吸苦・心拍数】

心不全のリハビリの評価項目【10選】

心不全に対するリハビリの評価項目を10個あげます。

以下の評価項目の状況で、負荷量を探りましょう。

心不全のリハビリの注意点【評価項目10選】
  1. 基礎疾患(心不全の原因となっている病気)
  2. 冠動脈の詰まり具合(カテーテル検査)
  3. 弁膜症の状態(エコー検査)
  4. EF:左室駆出率(エコー検査)
  5. CTR:心胸郭比率(レントゲン)
  6. 胸水の貯留の有無(レントゲン)
  7. BNP(NT-proBNP)やHb値(採血データ)
  8. SPO2、血圧、脈拍
  9. 不整脈の有無(心電図検査)
  10. 四肢筋肉量や体脂肪率(体組成計)

個人的には上記の項目をみて、評価しています。

とはいえ、実際に患者さんに活動していただいて、息切れや呼吸困難感を確認するのが、一番わかりやすいです。

あとは「安静時から息切れしている」とか「明らかに苦しそう」とかの場合は、運動は禁忌です。

また、後輩から以下のような質問を受けることがよくあります。

酸素を3L/分で使っていてSPO2:95%なんですけど、運動していいですか?

そんな断片的な評価だけでは、負荷をかけて良いか悪いかは分かりません。

「酸素3L/分使っていてSPO2:95%」にも色々あります

たとえば「入院当初はNPPV(人工呼吸器)だったのに、心不全が回復してきて、今は酸素3LでSPO2:95%」なら、少し動いてみても良いです。

逆に「最初は酸素すら使っていなかったのに、悪化してきて、酸素3L使ってもSPO2:95%しかない」なら、それは運動を開始するタイミングではありません。

断片的に評価せず、経過をみて考えましょう。

それでは「心不全のリハビリの評価項目10選」をひとつずつ紹介していきます。

基礎疾患(心不全の原因疾患)は何なのか

心不全を起こした基礎疾患が何か、でリハビリの負荷は変わります。

  • 心筋梗塞後:治療が終了していれば、しっかりめにリハビリ
  • 弁膜症:治療が終了していなければ、無理はできない
  • 不整脈:血圧、息切れなどが大丈夫なら、リハビリしても良い
  • 心筋症:息切れ、脈拍(心拍数)をみながら、リハビリしていく

すっごく簡単にですが、疾患別だと上記な感じです。

冠動脈の詰まり具合はどうか

冠動脈とは「心臓に栄養を与えている血管」です。

カテーテル検査によって、冠動脈の詰まり具合が分かります。

冠動脈の詰まり具合が、何%かによって、心臓の動き具合も変わってきます。

冠動脈の目詰まりが治療済みであれば、どんどん有酸素運動を行って、動脈硬化を予防していくべきです。

ちなみに、冠動脈を覚えるなら、心カテブートキャンプさんの解剖図 冠動脈を覚えるエクササイズだ!の記事分かりやすいです。

というか、心カテブートキャンプさんのサイトはすべて勉強になります。

弁膜症の状態はどうか

未治療な弁膜症の場合、運動はオススメできません。

とはいえ、コントロールされていれば、筋力を落とさないように、低負荷の筋トレ(自重の運動)や有酸素運動を実施していくべきです。

ここでいう「コントロールされている」とは、新たに「浮腫」や「息切れ」などの心不全症状が、出現または増加していない状態をさします。

自重(じぶんの体重)を使った運動ですら息切れしてしまうレベルの弁膜症なら、ADL(日常生活動作)の動き(例えばトイレや整容動作)で、筋力や体力を維持していくしかありません。

それは、どんな凄腕セラピストであれ同じことです。

EF(左室駆出率)はいくつか

左室駆出率は、50%以上で正常値です。

ただし、左室駆出率が落ちない拡張不全型の心不全「HFpEF(へフぺフ」というものも存在します。

心不全症例の約30~60%では左室駆出率が保持されている(preserved ejection fraction)ことが明らかとなった。

このような心不全は左室拡張機能障害に起因するとされ、拡張不全(HFpEF)とも呼ばれるが、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction;HFrEF)でも拡張機能障害を認めることが多いため近年は主にHFpEFと呼ばれることが多い。

たまに「心筋症」などでEF(左室駆出率)が10~15%しかなくても、ADLは自立している方もいらっしゃいます。

CTR(心胸郭比率)はいくつか

心胸郭比率は、レントゲンを見ればわかります。

心不全では「心臓が肥大(拡大)」している場合があります。

心臓は胸郭(の左右の幅)と比べて、男性では50%以下・女性では55%以下が正常です

心不全で、心臓が肥大(拡大)していると心臓と胸郭の割合が「50%以上(女性では55%以上)」になることもあります。

また、前回のレントゲン写真とくらべて「CTRが拡大していないかどうか」を比較するのも、リハビリを進めるときの参考にできます。

胸水の有無はどうか

胸水の有無も、レントゲンをみれば分かります。

レントゲンでは、

・「空気」は黒く写り
・「痰」や「胸水」などの液体は白く写ります

「胸水」は重力に従うので、立って撮影したレントゲンなら、上の引用欄にある画像のように、下の方に溜まって白く映ります。

ちなみに、胸水が写るのは、少なくとも「300ml以上」溜まっているときと言われています

胸水が溜まっているのは、心不全が悪化している状態です。

胸水が溜まっていたら、安静時でも息切れがあると思われます。

リハビリ(運動負荷)は避けた方がよいです。

というか、今すぐ総合病院などに搬送されるべきです。

BNP(NT-proBNP)の値はどうか

BNP(ビーエヌピー)もしくはNT-proBNP(エヌティープロビーエヌピー)は、心臓の状態を反映する値です。

採血データをみれば確認できます。

BNPは35pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)以上、NT-proBNPは125pg/ml以上で、心不全の可能性がある、という数値になります。

ただ、心不全の方は100pg/ml以上でも外来で経過観察されている場合もあります。

2倍以上の急激な増加は治療対象ともいわれます。

心不全管理中のBNPやNT-proBNP値は過去との比較が大切です。前回に較べて2倍以上に上昇した時には、何か理由があります。その原因を探索し、早目の介入が必要でしょう。

SPO2、血圧、脈拍(心拍数)はどうか

SPO2、血圧、脈拍(心拍数)も、運動負荷を決めるため大切です。

SPO2は、95~98%が正常値です。

酸素投与されていれば「酸素濃度が濃い空間に居る」ということになります。

理科で習ったと思いますが、空気中の酸素は「21%」です。

経鼻酸素1L使えば、この濃度が「24%」になります。

つまり、酸素を吸っている人は「酸素の濃い空間に居る」という事になります。

流量と酸素濃度の対応表は以下です。

次に血圧です。

血圧は「運動の前後」で比較します。

血圧が上がりすぎると良くないです。

収縮期血圧が180mmHgを超える場合は負荷をかけ過ぎです。

しかし、運動して血圧が上がるのは「正常」です。むしろ、血圧は上がるべきです。

血圧が上がるのは、心臓がしっかりとその運動に応えてくれているということです。

心不全の方の問題点は「負荷をかけたのに脈拍や血圧がちゃんと上がらない」ことにあります。

なので、運動して血圧が上がることは、悪いことではありません。

また、有酸素運動をすると血管が広がるので、逆に下がる場合もあります。

「ちょっとした血圧の変化」ばかりに気を取られない事がたいせつです。

不整脈の有無(心電図検査)

不整脈がある場合、運動負荷を強めにくいです。

正常な脈拍は1分間あたり60-100回です。

ただ、1分間あたり100回/以上でも、規則正しいリズムで速いのは、あまり問題ではありません。

逆に言えば、1分間あたり60-100回でも「トントン・トト・トントトン」のようなバラツキのある脈拍の方が問題です。

脈にバラツキがあって、ご本人さんも「胸があおる」とか「ドキドキして嫌な感じ」であれば、運動負荷を増やさないほうがよいかもしれません

あとは、血圧が下がっていないかも測定しましょう。

脈にバラツキがあって、血圧も”80/40″みたいに低い場合は、拍出がちゃんとできていないと考えられます。

四肢筋肉量や体脂肪率(体組成計)

四肢の筋肉量を測定することで、サルコペニア(筋肉減少症)の有無を見分けられます。

サルコペニアの状態であれば、筋力トレーニングやタンパク質を多く摂るなどの措置が必要だと分かります。

まとめ

  • 心不全は病名ではなく病態を表す言葉
  • 心不全を引き起こしている「基の病気」が大切
  • 運動によって血圧や脈拍は、ある程度上がってくれた方が良い

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りはスタ運営者の「ぱぱひさ」と申します。総合病院に勤務する現役の理学療法士です。心臓リハビリテーション指導士・呼吸療法認定士を保有しています。がんリハ研修受講済・臨床実習指導者講習会受講済。OSCE(オスキー:客観的評価能力試験)試験官経験あり。心臓リハ・呼吸リハ・ICUリハの分野で働くリハスタッフのためのサイトとなるよう目指して記事を書いていきます。
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