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橋本病は、日本人女性に多い自己免疫性甲状腺炎であり、進行すると甲状腺機能低下症を引き起こします。
関連記事:【完全ガイド】甲状腺機能低下症とリハビリ|理学療法士のための基礎知識と臨床ポイント
臨床現場では「だるい」「疲れやすい」と訴える患者さんの背景に潜んでいることがあり、リハビリにおいても知識が必須です。
この記事では疾患の基礎知識、症状、検査、薬剤治療、リハビリの実際、そして新人PTが臨床で押さえておくべきポイントを体系的に解説します。
橋本病とは?
概要
- 慢性甲状腺炎と呼ばれる自己免疫疾患
- 甲状腺に炎症が生じ、徐々に甲状腺機能低下を引き起こす
- 中年女性に多く、男女比は約1:20
発症の仕組み
- 自己免疫反応によって甲状腺を攻撃
- 抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性になる
- 甲状腺組織が徐々に破壊され、ホルモン分泌が低下
症状
橋本病自体の症状というより、結果として生じる 甲状腺機能低下症状が主体です。
- 倦怠感、動作緩慢
- 筋力低下、筋肉痛
- むくみ、顔の腫れ
- 徐脈、低血圧
- 体重増加、便秘
- 抑うつ傾向
新人PTにとっては「患者さんが疲れやすい理由」を理解するための重要な背景知識です。
橋本病に関連する検査
血液検査
- TSH:高値(機能低下時)
- FT4:低値
- 抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体:陽性(診断的意義が高い)
画像検査
心機能関連
薬剤治療(内科的管理)
ホルモン補充療法
- レボチロキシン(チラーヂンS®) が第一選択
- 投与量は少量から開始し、TSH・FT4をモニタリングしながら調整
- 効果が安定するまで数週間〜数か月
注意点
- 過量投与で甲状腺機能亢進症状(動悸・手の震え・不眠)に注意
- 妊娠・出産期の女性ではホルモンコントロールが特に重要
リハビリでみられる特徴
橋本病患者は、甲状腺機能低下症状をベースに以下の特徴を示すことが多いです。
- 運動耐容能の低下:歩行距離が短く、疲労しやすい
- 筋力低下:特に大腿四頭筋や股関節周囲筋に影響
- 関節可動域制限:浮腫や活動性低下による硬さ
- 抑うつ・意欲低下:運動に前向きになれない
リハビリの進め方(新人PT向け)
評価
- バイタルサイン(徐脈・低血圧を確認)
- 6分間歩行距離(6MWD)、Borgスケールで疲労感を数値化
- 筋力評価(近位筋を中心に)
- 精神面への配慮(気分・意欲の聴取)
運動療法
- 低強度から開始(Borg 11程度を目安)
- 有酸素運動:短時間の歩行訓練、自転車エルゴメータ
- レジスタンス:低負荷・高回数で筋持久力を意識
- 柔軟体操・ROM訓練:浮腫や硬さを予防
生活指導
- 疲労感に応じて休憩をこまめに
- 栄養士と連携し、食事・体重管理を指導
- 抑うつ傾向のある患者には、声かけや達成感を大切にする
リスク管理
- 粘液水腫性昏睡:重症例では低体温・意識障害を伴う緊急疾患
- 心不全合併:浮腫や息切れが強い場合は注意
- 薬の副作用:動悸や手の震えが見られたら医師に報告
新人理学療法士へのアドバイス
橋本病は「薬物治療により改善が期待できる疾患」です。
リハビリの役割は、薬の効果が安定するまでに 体力低下を防ぎ、ADLを維持すること。
- 記録を徹底(バイタル・6MWD・Borg)
- 無理をさせない、少しずつ段階的に進める
- 主治医・看護師・栄養士と密に連携する
よくある質問(Q&A)
Q1. 運動して大丈夫?
→ 内科的に安定していれば運動療法は推奨されます。
Q2. 他の疾患とどう違うの?
→ 橋本病は自己免疫が原因で、徐々に甲状腺機能低下に至るのが特徴です。
Q3. 筋トレは効果ある?
→ 有効です。特に下肢筋力の強化で歩行やADLが改善します。
まとめ
- 橋本病は 自己免疫性甲状腺炎 であり、甲状腺機能低下症を引き起こす。
- 診断は 血液検査(TSH・FT4・抗体)とエコー が中心。
- 治療は ホルモン補充療法(チラーヂンS®)。
- リハビリでは 低強度・継続・安全第一 を徹底。
- 新人PTは「焦らず、患者を支える視点」で介入することが重要。
免責事項
本記事は理学療法士向けの教育的解説であり、医師の診断や治療に代わるものではありません。実際の介入は必ず主治医や多職種と連携し、ガイドラインに基づいて行ってください。
ABOUT ME
りはスタ運営者の「ぱぱひさ」と申します。総合病院に勤務する現役の理学療法士です。心臓リハビリテーション指導士・呼吸療法認定士を保有しています。がんリハ研修受講済・臨床実習指導者講習会受講済。OSCE(オスキー:客観的評価能力試験)試験官経験あり。心臓リハ・呼吸リハ・ICUリハの分野で働くリハスタッフのためのサイトとなるよう目指して記事を書いていきます。